ハーナムキヤ(つまりモデルは花巻)の町の税務署長が主人公の物語です。
ユグチュユモト村で彼は濁酒(ドブロク)密造などすぐ見当がつくと脅しのような講演をしますが、村民は少しも恐れる様子はなく、その後の宴会ででた清酒のこの辺で市販される酒とは違う匂いに疑問をもちます。

 そこで部下のシラトリキキチに調査させるとやはり怪しい。で、署長自ら変装して乗り込み、村ぐるみの密造所を突きとめましたが、密造者たちに捕えられます。結局は助けられるのですが、これは大正12年に花巻税務署員の白鳥永吉が花巻税務署管内の和賀郡の湯本温泉付近で取締り中に殴られて捕まり、のち救助されたという事件をモデルに書かれています。部下を危険な目に合わせず、署長自らが犠牲になる、というこの物語には賢治独特の皮肉がこめられているのでしょう。賢治のころの花巻税務署は前のページの電気会社跡の斜め向いの駐車場あたりにありました。密造は、個人が濁酒を作る、というのが普通ですが、この話では、村ぐるみの組織が清酒を作る、という意外性に富む話になっています。

今は、駐車場になってしまった当時の花巻税務署跡

今は、駐車場になってしまった当時の花巻税務署跡。この前の道「館小路」は、賢治が生家から稗貫農学校に通う際によく通ったようです。

建て替えられ賢治の親族が暮らす宮沢賢治の生家

建て替えられ、賢治の親族が暮らす宮沢賢治の生家

地図:花巻税務署跡

もう一言

 花巻をもじった名前には「毒蛾」のハームキヤや「四又の百合」のハームキャがありますが、このハーナムキヤが一番ハナマキに近く私(米地)は好きです。好きな名前といえば、この作品にでてくる酒の銘柄に「イーハトヴの友」というのがあります。いい名前ですね。酒をあまり飲まず、禁酒主義者と思われがちな賢治が、酒の名にイーハトヴとつけたというのは飲ん兵衛には嬉しいことです。

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(32ページ・18.9MB/ダウンロード、表示には少々時間を要します。)

銀河鉄道のイラスト
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