東京から来たハンターの2人が、山の中で「山猫軒」という料理店を見つけて入りますと、いろいろな注文を店側から受けます。驚いたことにそこは、山猫たちが人間を誘いこんで料理してしまおうという店だったのです。
その店のモデルは、街から離れた洋館の北上市更木「中村邸」だという意見もありますが、ここは民家ですから他にも料理店のモデルがあったはずです。それは、花巻の仲町にあった「精養軒」であろうと思われます。
下に童話の中の山猫軒の看板と花巻駅付近にあった旧岩手軽便鉄道駅舎二階の精養軒支店の看板とを並べてみました。よく似てますね。同じような看板が本店にもあったようです。賢治の訪れた精養軒の仲町の本店がモデルのひとつとみてよいでしょう。(なお、賢治の時代の看板は右横書が多く、左横書は少なかったのです。)
(『広がりゆく賢治の宇宙』より) |
看板の文字 |
精養軒の写真です。ドアの所に上と似たような看板があります。昭和13年頃の精養軒『非常時岩手の展望』より |
古い花巻の街並み、長屋の向こうに精養軒が見える |