ジョバンニは家で夕食をとったあと、母親の飲む牛乳が配達されていなかったので、それをとりに出かけます。その途中、ちょうどケンタウル祭で賑わう街で彼が見入ったのは「時計屋の店には明るくネオン燈がついて」星座早見盤を中心に宝石が星のようにまわったり、銅の人馬(ケンタウルス)などの星座キャラクターがまわってきたりしているショーウインドウでした。
この時計店のモデルは上町にあった荻野時計店であるといわれています。時計店はもちろん明治以降に生まれた商売で、ハイカラで高価なものを扱う、庶民にはまぶしいような店が多かったのです。ジョバンニが見とれたのも当然です。ただし、花巻の街には時計店は他にもあり、賢治が小原時計店のショーウインドウを眺めていたという話もあり、複数のモデルがあったのかもしれません。
荻野時計店 『花巻市展望』より |
昭和13年の荻野時計店『非常時岩手の展望』より |
現在は、面影が残っていない荻野時計店跡 |
このショーウインドウの中に飾られたものの中に星座早見盤が出てきます。それは夢の銀河鉄道の車中では、カムパネルラの持つ地図として登場します。銀河鉄道の旅と街とを結びつけるこの時計店のショーウインドウをぜひ再現して、賢治の街の名所の一つとしたいものです。