この童話は、鉄道線路わきの電信柱たちが、兵隊となって歩き出すという幻想的な物語です。大きな城のようにみえる駅の近くの話で、主人公の少年は電気会社のある町に住むということですから、盛岡か花巻がモデルですが、盛岡ならば賢治は常に「市」と書きますので、町は花巻です。電信柱は工兵、竜騎兵、擲弾兵(てきだんへい)全部で15,000人の兵隊として登場しますが、これは弘前師団の人数とそれを構成する工兵、騎兵、歩兵を表しています。花巻での工兵や騎兵の演習を「銀河鉄道の夜」や「イギリス海岸」にも書いています。この工兵や騎兵は弘前師団に属していますが、盛岡に駐屯しており、花巻が主な演習地の一つでした。
賢治が自ら描いた「月夜のでんしんばしら」 |
花巻小学校前にあるモニュメント |
現在のJR花巻駅前、右端の林立する白いポールは「風の鳴る林」。 |
賢治は、ドッテテ ドッテテ・・・・と行進する軍歌や、電信柱の兵隊の絵などを自作で残しています。思い入れの強い作品(『注文の多い料理店』所収)だったのですね。北に進軍するのは、当時(大正10年)盛岡の工兵隊がシベリアに派兵されることが決まっていたことを踏まえているようです。