「その城あとのまん中に、小さな四ッ角山があって、上のやぶには、めくらぶだうの実が、虹のやうに熟れてゐました。」(「めくらぶだうと虹」)そのメクラブドウ(ノブドウ)は、虹に向かってあなたは高く光の空にかかり、皆はあなたをほめると虹を讃えます。このメクラブドウの話は、同じく四ッ角山で少女が有名な歌手マリヴロン先生を讃える「マリヴロンと少女」に改作されます。
「四ッ角(シッカク)山」は、花巻城址にあった後に四角(シカク)山とも呼ばれた、花城小・花巻小の往時の卒業生にはなつかしい、小学校の校庭にあった小さな丘です。四角なのは花巻城の鐘楼の跡だからで、今はかつての大手門付近に四ッ角山(四角山)もその上の鐘楼も復元されています。
復元された四ッ角山(四角山)・鐘楼 |
四ッ角山(四角山)跡の標柱 |
めくらぶどうや少女は、かつて中学校卒業直後の賢治が四ッ角山(四角山)で、大きな夢と現実とのはざまで悶々としていた姿を映しています。結局、花巻をほとんど離れずノブドウのように生きた賢治ですが、彼の作品は虹のように天空高く輝いたのです。